循環型社会に向けて珈琲屋ができること。
ペーパーフィルターを使い捨てない、リユースできる素材でコーヒーを淹れるということ。
まるたけ堂珈琲のハンドドリップは、布製のネルフィルターを使っています。
ネルフィルターのネル生地は片面を起毛した綿の布。冬の定番のネルシャツの生地を想像してもらえるとわかりやすい、ふんわりと柔らかい布でコーヒーを濾しています。
ネルフィルターを使うハンドドリップをネルドリップといいます。まるたけ堂珈琲ではオープン当初からネルドリップでコーヒーを抽出しています。
ネルで抽出すると濃厚な味わいが楽しめます。ペーパーフィルターに比べて布の目が粗いので油分が通ることで、旨みのもとである油を濾さずにドリップすることができます。
このネルフィルターは洗うことで繰り返し使うことができます。当店でも毎日の営業終了後に煮沸して乾燥させて、順番に使っています。お手入れをしながら大切に使えば長持ちします。
うちの様な小さなお店でも、年間で10000杯以上はコーヒーを淹れます。全てをペーパーフィルターでドリップすれば1万枚の紙を使いますが、ネルフィルターであれば数枚ですみます。
ペーパーフィルターの利点は便利であること。コーヒーカスごとゴミ出し捨てれば楽ちんです。その代わり使い捨てなので大量の紙を消費します。
ネルフィルターはその点、毎回洗って使っています。毎回洗っているので水資源は多く使うかもしれません。
お店ではドリップを終えたネルからコーヒーカスを取り出し、焙煎後のハンドピックで弾いたコーヒー豆たちと一緒に堆肥にして循環させます。
家庭で淹れるコーヒーは1日1回くらいですが、我々のような専門店は比較にならない程コーヒーを淹れています。その分だけゴミ出るわけで、そこでリユースできる素材を使うことは意義があるのではないかと思っています。
ネルドリップだけではなく、エスプレッソやフレンチプレス、サイフォンも使い捨てフィルターを使いません。
最近は家庭でも手軽に楽しめるネルフィルターが増えてきました。うちのお店でも円錐型のドリッパーで使える布製フィルターをご用意しています。
このネルフィルターですが、いきなり使うと布の匂いがコーヒーについてしまって、何とも言えない不快な方向の香りになってしまいます。
今日はまるたけ堂珈琲おすすめの新品のネルを使う時の準備方法を紹介します。
1.水で揉み洗い
ここで何度も水を変えて揉み洗いすることで、生地に付いている糊などを落とします。
いきなり次のステップの煮沸に入ると匂いがとれない原因になりますので、水濁りがとれるまで繰り返し洗ってください。
2.煮沸する
たっぷりのお湯でネルを煮ます。このままお湯で煮てもいいですが、より匂いをとるためにコーヒーの抽出液を投入します。
煮る時間は15-30分位が目安です。
検索すると「コーヒーを抽出した後のカスで煮ると良い」と書いてあることもありますが、コーヒーのカスがネルに入り込んでしまい、後でコーヒーカスをとるのが大変なのでおすすめしません。
少し勿体無い気がしますが、コーヒーを抽出したエキスを入れてあげると、後処理が楽になります。
3.乾燥させる
煮終わったネルを、再度たっぷりの水道水で揉み洗いをします。
色が出なくなるまで繰り返したら、硬く絞ってから乾燥させます。
この時にネルを嗅いでみて、まだ布の香りが残っていたら煮沸に戻ります。
ネルフィルターの管理ですが「水につけて冷蔵庫で保管」がセオリーのようですが、当店では「しっかり洗った後に乾燥」させる方法をおすすめしています。
保管が楽なことと、カビが生える心配がありません。
普段は煮沸などのお手入れをしっかりすれば、半年以上は繰り返し使用可能です。環境にもお財布にも優しいコーヒーの抽出方法ですので、機会があればぜひチャレンジしてみてくださいね。
気負いすぎると続かないので、自分ができる範囲でちょっとだけ環境の事を考えた生活が送れれば、そしてまるたけ堂珈琲もちょっとだけでもお手伝いができれば嬉しいなぁ思います。